2024-01-01から1年間の記事一覧
高階秀爾『日本近代美術史論』の、黒田清輝についての章の中で、黒田が9年の留学を終えて帰国する直前に書いた手紙が引用されている。 もう四五ねんもこつちにをつたならすこしハせけんにしられるようになるかもしれませんがざんねんです いまこれからといふ…
やっと今学期の教育・事務が片付く見込みが立った。ここからは研究に割く時間を増やせそうだ。 目下最も忙しいのは修士論文の指導だが、受け持ち学生が短期間の間に一気に力をつけて研究成果を形にする勢いと成長速度に刺激を受けて、自分も修論くらいの分量…
ロンドンとマンチェスターでの面接が終わった。 まだ結果は出てないがとにかく出し切ったし楽しかった!!! プレゼンとインタビューを通じて自信が持てたのが、今いる場所での日常やこれまで積み上げてきた経験は英国圏のアカデミックジョブマーケットで通…
ロンドンは無条件にワクワクした。叶うならここに住みたいと思うが、とにかく物価が高過ぎる。テニュア持ち大学教員になってロンドン補助が付いたところでロンドンで文化を享受するには全く足りないだろうし、文化を享受できないならロンドンに暮らす意味も…
重圧は感じるが、夢の舞台に立てること、そこに呼ばれる自分になれたことが、まずは誇らしい。結果を出せなくて良いので楽しんでこよう。 今後立ち続ける場所なので。
新年度の始まりということで、大学教員のサバティカル報告をたびたび見かける。 自分は少し前までそうした海外駐在やサバティカルがものすごく羨ましかったのだが、最近は少し考えが変わってきた。 充実した数年間の短期滞在を得るよりも、研究者として総本…
上海当代美術博物館に行ってきた。最初はテートモダンを連想したが、それに留まらない奥行きとスケールで独自の境地に達していた。 現代美術に没入するためには空間的な広さは必要で、広大さを強みとする中国と相性が良いように思った。 本当に辛い時や試さ…
来月には欧州出張がある。 自分の英国での用事と合わせてパートナーが東欧での仕事が出来たので、いっそのこと二人とも同時に行くことになった。単純に旅行として楽しみである。 それはそれとして、各種の準備・仕込みは順調に進んでいる。本番で聞かれそう…
今週に入って、ようやく自分の研究に取り組む勢いが出てきた。ついでに論文とは関係のない「勉強としての論文読み」も捗っている。 もっとも、研究者たるもの、やる気が出てようやく論文を読んでいるようでは全然駄目だという自覚がある。呼吸をするように細…
浙江美術館に行ってきた。大変印象的な作品と展覧会の数々。 こういう作品を適切に評価出来るのが、本当にビタキ素養があるということなのだろう。 鑑賞と批評の訓練が求められる。
浙江美術館に行ってきた。大変印象的な作品と展覧会の数々。 こういう作品を適切に評価出来るのが、本当にビタキ素養があるということなのだろう。 鑑賞と批評の訓練が求められる。
いくつかの休講の兼ね合いで、今日は6時間通しで授業をやることになった。 正直めちゃくちゃ疲れた。肉体的、頭脳面での疲労だけではなく、精神が磨耗するような感覚。はっきり言ってむしゃくしゃしており、この感覚を思い出すのは、博士課程の追い込みが大…
今日から、いくつか招待されていた英国大学の就職面接が始まる。本命がまとまる4−5月あたりには現地に渡航して対面での面接に臨む予定だが、今日のものはまだオンラインでの肩慣らしといったところ。 この面接は面白くて、いわゆるTeaching & Research (教…
同世代ややや上くらいのいわゆる若手研究者(Early Career Researchers)を見ていると、そろそろ答え合わせが進んできた感があり、頭角を顕してきた人とそうでもない人の差が鮮明になってきたように思う。そして職業柄、この差は最後まで埋まらないのだろう。 …
新学期が始まり2週間が経過し、徐々に授業のペースも掴めてきた。 手探りの中で仕事をしている感覚はまだ残るが、それも悪くない。脳が若返るような気がする。 授業日の朝には「稼ぐぞ!貯金するぞ!」と掛け声をあげている。己を鼓舞して起き上がるために、…
直前の記事で書いた、「上位互換問題」についてパートナーに愚痴ったら、「別に唯一無二である必要はなくない?大学からしたら、単純に同じようなことができる戦力を増強したいだけかもしれないし」と呆れられた。大変に気が楽になった。 来月は渡英。パート…
特に捻りもなく、表題通りの話を考えている。 人間はそれぞれ唯一無二でかけがえのないものだと考える人道主義的な立場から、「君のやっていることは誰かの下位互換だよね」という発想は出てこないだろうし、また研究者というのは(根拠がなくとも)自分の研…
別のポストでも度々言及しているが、英国の研究大学(早い話がラッセルグループ)のテニュアポスト面接にいくつか呼ばれており、採用される可能性は極めて低いし、そもそも採用されたところで今の職場を蹴っていくのか相当に疑わしいまま、惰性で準備をして…
新学期が始まった。大学院で2コマ担当することになるのだが、一つは昨年受け持ったものと同内容であり、もう一つも修論執筆に忙しい2年生に対して補足的な授業を提供するという位置付けなので、授業準備の負担は軽い。本当に良い職場だ。 むしろ今学期により…
If we have our own ‘why’ of life we shall get along with almost any ‘how’. この割と有名な表現の引用元を探していたところ、ニーチェの『偶像の黄昏』らしい。 フランクルが引用して言い換えた "He who has a why to live for can bear with almost any…
https://orcid.org/0000-0003-2450-277X この研究者は自分が今いる職場から英国の大学に移った一例。博士号取得から2年間働いて、ロンドンに移籍してしまった。 このように、自分の在籍大学は人の往来が結構激しく、さくっと採用して、気楽に出て行って、ま…
自分の考えを整理する場としてこのブログがいよいよ有用になってきた(それを世に出す必要はあるのか?) ともあれ、海外の研究大学から複数面接に呼ばれるようになったことで、今の職場での心の持ちようもだいぶ良くなった。以前は、現職での上司・学部の評…
King's College Londonから今の職場に移ってきて、論文や研究書は変わりなくアクセスできていたので、中国でも変わらぬ研究をできると思っていたのだが、やや見通しが甘かったらしい。 自分の英国に関する歴史研究に不可欠な、新聞・雑誌を網羅したデータベ…
日本での休暇を終えて、上海に戻ってきた。 今はとても気分が良い。理由は英国の研究大学から専任講師の面接に複数呼ばれ始めたから。 自分が今の職場で積み上げているものは正しく、報われ始めている。 何より「他の可能性」が現実的に見えてきたことで、逆…
イギリスの大学のテニュアポストに面接で呼ばれた。いわゆるドリームジョブ(仮にM大学とする) 通知を受け取って初めて認識したのだが、自分はまだ心の準備が出来ていなかった。記念受験気分。 実はもう一件似たような面接に呼ばれている。 良し悪しではな…
自分が企画したオンラインセミナーが無事に終わった。 現職場と母校との橋渡しをしつつ、「アジアの事例と議論を文化政策・文化産業研究に持ち込む」という理念を形にできてよかった。 セミナーに参加して、新しい題材や手法、議論に触れると、脳味噌に新鮮…
せっかく日本にいる間は日本語の娯楽を楽しもうと思っている。 『秋刀魚の味』を再鑑賞。大学新入生の時に見てもなんとも思わなかった箇所が刺さる刺さる。やがて来る残酷な瞬間への予習として優れている。 十川信介『近代日本文学案内』。「立身出世」に関…
文化政策・文化産業(クリエイティブ産業)の研究者をやっていて良かったと感じるのは、人文文化への関心と政治経済への関心との両方を職業として追究できることである。むしろ、優れた文化政策・文化産業研究者は、政治経済を分析する醒めた頭脳と芸術文化…
中国の旧正月休暇は大学も休業状態なので、日本の実家に2週間ほど帰省している。 この休暇を通じていくつかの好ましい影響を経験したので記録しておく。 どうしても書き進められなかった日本語の研究計画書をスルスルと数時間で書き上げることが出来た。新…
大学教員という仕事が多忙だ不安定だ不遇だ、という話を当事者が頻繁に述べているので、天邪鬼な自分としては、「いやいや、場合によりますよ」と伝えたくなり、自分の職場・待遇がいかに素晴らしいか書き連ねようと思う。 休みが長い。1−2月、6−8月は丸々休…