2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

論文未満の原稿の行方

自分の研究者としての存在意義は国際査読誌から論文を出すことだと思っているのだが、生きていると論文以外の、もしくは論文未満の書き物というのも出てきてしまう。 最初から「このテーマ、この調査、この成果は査読論文として通す!」という意気込みのもと…

晩酌後の映画鑑賞

「晩酌後の時間潰し」が「日本語圏のSNSで慇懃無礼なレスバトルを繰り広げること」という人生に想いを馳せる。あまりに嫌過ぎた… しかるのち、最近自分が晩酌後に何をしているのか考えてみた。 恋人と同居するようになってから、よく映画やドラマを観るよう…

謎の旅費補助

現職の契約の中に、travel allowance(旅費補助)が年間10,000RMB、日本円で20万円ほど含まれている。 当初は国際学会や海外フィールドワークに用いようと思っていたが、それについては学科の予算から別建てて(割と気前良く)支払われることが判明した。 そ…

英国憧憬

修士課程と博士課程、二つの留学の狭間で日本で過ごした一年間が本当に辛かった。 自分の研究テーマは日本語圏では必ずしも研究者や研究書の層が厚いとは言えず、従って自分は「総本山」とも言える英国に留学した。 この留学期間は本当に充実していた。手渡…

趣味の読書

最近、TASCHENの建築家全集を眺めることが増えたのだが、個々の建築家について相当の分量触れると、作家性のようなものが分かってくる気がする。読んだ甲斐がある。 TASCHEN Books: Zaha Hadid. Complete Works 1979–Today. 2020 Edition ベタだが、夏目漱石…

「とりあえず英語で発信」的なHP・WP

とりあえず英語で個人用HPを作って、英語で書いた査読無しワーキングペーパー(WP)を挙げる、みたいな仕草を、特に院生・若手研究者向けに推奨されることが多々あるじゃないですか。 実力を磨かず、質を高める努力をせずに、「いつか見つけてもらえるかも」「…

素晴らしい助言

自分が一番迷走していたのは、英国での修士課程を終えた後、博士課程でロンドンに戻ってくることを心に期していたものの、奨学金の目処が立たず国内大学向けのフェローシップ(学振DC1)にも落ちた一年間だった。 そんな折、関西の大学にいる研究分野が同じ…

スカッと休養

蘇州の現職に就いて良かったことは、博士留学・パンデミックで会えなくなっていた恋人と一緒に暮らせる点に尽きる。 今では、金曜日の夕方から月曜日の午前までは研究とも職務とも離れて二人でのんびりと過ごしている。具体的には、自宅で映画を観たり、共通…

壁はどこにある?

非英語圏で研究をする、論文を書く。英語で書いても採択されない、数が増えない、質も伴わない。何故なのか? 資料へのアクセスを含む「研究対象との距離」が障壁として挙げられることが多い。正しいが、それだけではないと思う。新規性のある材料を集めるこ…

トップジャーナル

主催しているセミナーシリーズに登壇してくれた研究者の論文が、文化政策研究のトップジャーナルに掲載された。 セミナーの内容とも関連しているので登録者に論文を周知するメールを送ったところ、母校ロンドン大学の教員から「こういう研究を学生に紹介した…

論文出版2024

論文が採択された。今回はカルチュラルスタディーズ(Cultural Studies、カルスタ)の雑誌である。 www.degruyter.com 博士論文の一部をもとにした論文だが、こうして掲載に漕ぎ着けるとは思っていなかった。理由はいくつかある。 第一に、自分はカルスタの研…

教育評価

いわゆる授業評価アンケートの結果が届いた。うちの大学では、学部・学科・大学全体の平均との比較、前年度からの上下など、相当厳しく網羅的に情報を集めてレポートとして共有されるのだが、今回の結果は相当によかった。 実際に教壇に立つのはほぼ初めてで…

出版と就職との間の壁

自分自身の研究について査読修正対応をしながら、偉そうに学生に対しては指導的な立場をとっている。生半可な原稿に駄目出しされながら、他方では修論・博論の指導をしたり推薦状を書いたりしている。教員という立場を得ても修行時代の初心を忘れないように…

やる気の出し方

研究は骨が折れる。ましては論文執筆・投稿はなおさら。だからこそ、どうすれば、どのような条件下でやる気を出せるのか、言語化しておくことが有用と思われる。 自分の場合、最も執筆の意欲が高まるのは、良質の映画・演劇を鑑賞した後である。ジャンルが違…

南京

週末に彼女と南京に行ってきた。生憎の曇天ではあったが、それはそれで趣があった。 特に、文化政策・クリエイティブ産業の研究者としては、世界遺産に負けず劣らず、ショッピングモール内の美術館が堪らなかった。 南京大学は自分が初めて中国に訪れた時に…

海外気分

2019年1月。イギリスに着いて真っ先に向かったのが大学の真隣にあるWaterloo Bridgeで、そこから見える景色に思わずガッツポーズを取ってしまった。 それ以来、ロンドンでの三年間、テムズ川の橋を渡って散歩や通学をする時間がずっと好きだった。 そして今…

風姿花伝

『風姿花伝』を今読み返してみると、思った以上に芸事を勝負・競争として捉えていることが目に留まり新鮮であった。観客・パトロンありきの表現活動にはそうした競争的な側面は間違いなくあるし、そこから目を背けるのがむしろ無理があると再確認した。 「ヒ…

自分のキャリアを長期的なトレンドに位置付ける

己のキャリアを長期的な潮流・展望の中に位置付けてみようと思う。自分は人文学の領域において、日本で学部、英国で大学院に通い、そのまま海外の大学に専任ポストで就職した。 海外大学の就職は、自然科学・社会科学においては一般化してきた印象があるが、…

外貨が欲しい

今の職場は、基本的には中国の口座に人民元で給料が支払われる。英国やEUから来る突発の仕事にはポンドで給料が支払われ、こちらは英国の口座で受け取るのだが、額も頻度もたかが知れている。 自分は英国や日本で散財する機会が多々あるのだが、外国人が人民…

仕切り直し

年末年始にかけては、彼女との結婚に向けた顔合わせをしたり、修論・博論の指導に時間を取られたり、研究以外に色々とやることがあった。 それらが落ち着いて職場に戻ってきたら、大学はすっかり冬季休暇の弛緩した空気にあり、気持ちが引き締まらない。 な…

駄目っぽい特徴

(1)何かにつけて知った口を利く、具体的には(2)自分が到達できていない成果を過小評価する。一方で、(3)プレーヤーとして結果を出す前に、コンサル・参謀的な立ち位置で物事を語り出す。こうした言動によって何がしたいかというと、(4)自分の駄目さ…

教育雑感

大学院生のエッセイ採点が終わった。今学期教えていたのは、修士課程の文化政策に関する授業で、期末課題もそれに関連した4000 wordsエッセイを2本ほど課した。 この課題を採点することは自分にとって感慨深い経験であった。何故ならば、自分自身の大学院留…

研究苦戦の冬季休暇

自分の職場は英国大学の中国キャンパスということで、学事暦がやや特殊で、年明けから2月下旬の旧正月終わりまでが長い冬季休暇となっている(英国本国の場合は年初から新学期が始まり、2ヶ月ほど早く春季休暇に入る)。この休暇を利用して婚約者と自分の両…

『アオアシ』と「死ぬほど」

「考えるフットボール」でお馴染み、『アオアシ』を最新話まで読んでいた。 作中において、国内クラブのトップレベルで40歳まで現役を続けている選手、司馬明考に関する印象的なシーンがある。 彼がいかにプロ入りしてキャリアを築いてきたか回想する際に、…

2023年の反省(研究編)

2023年は、年初に博士号を取得し、その直後からビザの発給も待たずにリモートで教壇に立ち始めたため、大変に慌ただしい一年となった。 研究成果に関しては、春から夏にかけて、博士論文をもとにした原稿が、欧 (International Journal of Cultural Policy…