出版と就職との間の壁

自分自身の研究について査読修正対応をしながら、偉そうに学生に対しては指導的な立場をとっている。生半可な原稿に駄目出しされながら、他方では修論・博論の指導をしたり推薦状を書いたりしている。教員という立場を得ても修行時代の初心を忘れないようにしたい。

とくに、博士課程出願の推薦状執筆や博士論文の指導をしていると、「研究を完成させるとはどういうことか」「いかにして研究者になるのか」という問いについて考えされられる。

最近は「研究成果が認められる」と「研究者として認められる」との間の壁について考えている。

ある国に留学して学位を得ること、ある言語圏で研究成果が刊行されることと、その地域のアカデミアでポストを得ることは難易度が全く違っており、自分は最初から一貫して後者だけを目指してきた。が、博士指導においてうまく言語化して有益な助言を出来ていないし、自分の中で指導に落とし込めるほどの蓄積がない。

極めて抽象度の高い助言をするなら、勝ち負けから逃げないこと、戦う覚悟を持つこと、あたりか。

研究やキャリア形成をひとつの勝負と見立てるならば、スタートからゴールまでの一連の流れにおいて、自分の場合、

 

出遅れた状況、恵まれない環境から捲りあげるのは最高に得意。

横並びの状況からコツコツと抜きん出るのは苦手。

優勢から嵩にかかって攻め立ててリードを広げるのは得意。

圧倒的な優位から止めを刺して決着をつけるのは非常に苦手。