論文出版2024

論文が採択された。今回はカルチュラルスタディーズ(Cultural Studies、カルスタ)の雑誌である。

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博士論文の一部をもとにした論文だが、こうして掲載に漕ぎ着けるとは思っていなかった。理由はいくつかある。

第一に、自分はカルスタの研究を全く追っていない、「畑違い」の研究者であるから。昨年度に、自分の専門分野ではフィールドトップ誌から複数の論文を出版しており、同じ雑誌に出すのも同一分野内でジャーナルの格を下げるのもピンとこなかったので、思い切って分野を変えてみることにした。今後の転職等々を見据えるなら守備範囲は広いに越したことはないと思った。

第二に、この論文は博論のいわば「出涸らし」であった。自分の博士論文は、三つの事例研究(博論の各一章に相当)と、事例全体にまたがる議論・考察の章からなっているが、今回はこの考察パートから引っ張ってきた論点の一つを取り上げた。先述した専門分野の業績は事例研究チャプターをそれぞれ一つずつ用いたのに対して、全体にまたがる議論、それもその中の一論点を論文というフォーマットに落とし込むのは骨が折れた。

投稿から採択に至る経緯としては、まず叩き台になる原稿を8月頃に書き上げ、カルスタのトップジャーナル二本に応募したところ立て続けにデスクリジェクトを食らった。ただ、そのうち一つは「この論文がなぜ駄目か」という指摘を具体的にくれたため勉強になった。なにより、決定が早かったのがありがたかった。

とはいえ、デスクリジェクトで得られる経験値もたかが知れているので、なんとなく査読に回りそうな雑誌(過去の論文掲載者の経歴や aim/scopeあたりを読む)を探して投稿してみた。

今回の経験が特に有意義であったのは、査読コメントがこれまで受けた何よりも教育的・建設的かつ汎用性が高い内容であった点にある。

内容は当然公開できないが、この査読を得られただけで、そしてこうした査読の書き方を自分のアーカイブ・レファレンスとして確保できただけで、自分にとっては非常に実りある経験となった。

2024年も論文を出し続けられそうで喜ばしい。俺にはまだまだまだまだ論文にしたい研究がある。

それにしても、毎年欠かさず論文を出し続けることがいかに大変か、つくづく分かってきた。CV上でそれを実現できている人を全て尊敬する。