ロンドン大学の一つ(UCL)のpermanent lecturer 面接を受けてきた。結果から言うと惨敗で、正式な通知を待つまでもない、という感じ。ともあれ、面接内容を振り返ってみると学びも多く、海外大学の人文社会学部に就職を目指す人には有用かも、と思うので、記事にまとめておこうと思う。
まず、事前に用意されたお題「Tell us about your research and how it connects with the Programme」に基づくプレゼンテーションを10分ほど行い、その後30-40分ほどの質疑応答。
質問内容としては、
1. メディア教育(media education)という分野において、あなたが考える主な課題は何か?
この質問に対して自分は、curriculum decolonisation, inclusive curriculumみたいな話をしたのだが、「課題(key challenges)」について答えるのではなく、解決策や展望について先に語ってしまったため、審査員に「要約すると、つまりこういうこと?」と言い直される。辛い。
2. あなたはcritical media literacyとmedia artの関係性をどう捉えていますか?
振り返るとこの質問が一番重く、正直あまり良い答えが浮かばなかった。そこで、学生教育の経験において実務的な関心から始めても、批評理論を学ぶことが中長期的に視野を広げることになって…ゴニョゴニョ、みたいな話をした。
振り返ると、この質問は応募先の専攻と博論の研究テーマが合致していない自分の「専門性」を試す、突っ込んだ質問だったのだとわかる。次の質問3もおそらく同じ趣旨
3. 若手研究者(early career researcher)としての、あなたの研究関心をまとめてください
こちらに関しては普段から話している内容をそつなくまとめることができた。ただ、やはり話していて、「これって応募先のテーマ(media education)となんとなく遠いよなあ」と思うなど。
4. (外部の審査員、確か社会学部の教授だった、からの質問)あなたは国際的な学生(international students)を教える上で何が最も重要だと考えますか
この質問は自分の経験に即して自信を持って答えられた。特に自分が今教えているリヴァプール大学上海キャンパスの話を絡めたところ、それなりに盛り上がり、好感触。
4-1. (派生質問)それでは、あなたが特に教えてきた「東アジア系以外の」international studentsについてはどのような留意点があると考えますか?
こちらも、King's College LondonでEU圏の学生中心で教えた際の経験を伝える。
5. (最大のやらかし質問)今回応募してもらったプログラムはX研究所とも共同作業することになるけれど、あなたはそこにどのような貢献ができますか
そんな研究所があることすら知らなかったので、とりあえず事前調査で知っていた研究者の名前を挙げて、共同研究の提案を複数言及。あとは「組織文化って色々ありますから、まずはそこでなにが求められているか、観察からっすね、アッハッハ」みたいな濁し方をした。しにてぇ…
みなさん、応募先のポストで期待される役割、応募先の組織構造・関連機関はちゃんと十分調査しておきましょうね。俺も次からそうします…
6. このポストではleadershipが特に重要になり、求める人物像にもそう明記されていますが、あなたが過去に実際に働く中で発揮したリーダーシップについて教えてください。
6-1. そうしたリーダーシップを踏まえた上で、あなたが過去に職場で経験した最も困難な状況とそれにどう対処したか教えてください。
詳細は省くものの、この質問には今の職場での経験や過去に母校で非常勤やカリキュラム調査をやっていた経験を踏まえて上手く答えられた感触がある。
特に、この手の質問には勤務経験に即した具体的なエピソードがあると強く、博士院生や研究特化ポスドクの経験しかないと辛い質問だな、と感じた。
「面接は以上です。なにかこちらに質問はありますか?なお、ここでの会話は審査に一切考慮されません」
この時点で不合格の手応えが濃厚だったので、開き直って、研究・教育の時間配分、学生の数、教えるコホートのバックグラウンド、さらに「メディア教育」の歴史とUCLが果たした役割などを聞いた。大変勉強になったが、こちらは流石に公表が憚られる。この段階では自分の緊張も取れて、話が大変盛り上がった。
振り返りは以上。少し落ち込んでいる自分を鼓舞するために言い切ると、落ちようが滑ろうが、面接に呼ばれただけ俺は偉いし、今の段階でこの経験を出来たことは必ず次に繋がると思う!切り替えて頑張るぞ!