今後3年間の抱負(2023/04-2026/03)

大学教員としての初めての学期が始まり、端的に言って教育・学務で非常に忙しい。自分の就職先が新設の大学院コースで、全てを一から立ち上げる必要がある、いわばベンチャー創業のような状況にあることが主な理由と思われる。そうしたなか、教育や学務に割り当てる時間や労力がどうしても増えてしまい、研究に専念できていた博士課程やポスドク生活のようにどうしても進捗や集中を得ることが難しく感じる。

 

博士課程の間はある程度CVに欠けている要素があっても、将来性を見込んで就職できたが、博士号を取得して以来、常に時計が動いており、流れた時間に対応して積み上げた業績や実績がないと、「将来性への期待」がどんどん目減りするのだと思う。

だからこそ、今後(少なくとも3年以内に)再び「ジョブマーケット」に出る算段がある自分としては、研究業績・教育実績・学務経験・といった複数の軸で満遍なく成果を上げる必要があると感じる。

そのため、漫然とした時間配分により、キャリア形成に偏りが出ないように、今後三年間の中長期的な目標を設定してみる。

 

 

  1. 研究

研究に関しては、同世代・同じ職階の相手に数字の上で優位を取る。なにより、「研究専念のポスドクを過ごしていた自分」に引けを取らない成果を挙げる。

1-1. 文化政策研究・アーツマネジメント研究の国際査読ジャーナル論文を9本出版する

  • 掲載誌の中にはInternational Journal of Cultural Policy; Media, Culture and Society; Cultural Trends; POETICS; Journal of Arts Management, Law, and Society; Culture: Policy, Management and Entrepreneurshipを必ず含める。
  • 刊行論文のうち、3本以上は必ず新規の共著者との論文とする(現在進行形の、イギリス・イタリア・インド・タイの研究者との共同研究を論文化する)
  • 刊行論文のうち、2本以上は博士論文の内容を用いる。

 

1-2. 他分野のプログラム・ワークショップに参加する

 

1-3.若手研究者のグループと共編著の出版契約を結ぶ/ジャーナル特集号の企画を通す

  • 若手研究者によるシンポジウムを企画する
  • International Journal of Cultural Policy; Media, Culture and Society; Cultural Trends; POETICS; Journal of Arts Management, Law, and Society; Culture: Policy, Management and Entrepreneurship などの特集号の公募に応募する
  • この企画を通じて、同世代で同じような辛い経験をしてきた若手研究者の友人たちとの絆を深める。

 

 

  1. 教育

2-1. 大学院・学部で幅広い授業担当の実績を積む

  • 担当授業については、複数のテーマ(メディア文化政策、メディア理論、クリエイティブ産業概論、知的財産、博物館学など需要が高いテーマ)を大学院・学部レベルの両方で担当することで、「教育ポートフォリオの幅」を持たせることを意識する。
  • 新しい就職先では、 新設された大学院プログラムの授業2-3コマに全責任を持つ専任講師として、大学院の指導要項に基づいて、LMSの運用、シラバス・カリキュラムの作成から講義・セミナー設計まで一から全て自分で行っている(例えばhttp://modules.xjtlu.edu.cn/dom?dom_code=FTA)
  • そこでは、英国大学で具体的に用いられる制度や指標も参照せねばならず、学ぶところが非常に多い。こうした教育経験や実務内容は定期的に振り返り、言語化し、自覚的にまとめておくことで、ジョブインタビュー時に根拠あるエピソードを提示できる状態が望ましい。

 

2-2. 論文指導・学位審査に携わる

  • 自分の母校では博士号を取得した若手研究者が修論・卒論の指導教官を行うことがあり、リモートで可能なら応募してみたいところ。
  • 就職先での修論・卒論指導にはもちろん取り組み、他にも卒論執筆者向けのワークショップなどを優先的に引き受ける。
  • 他にも、大学教員の立場になったからこそ出来ることも増えているはずなので、積極的に教育経験の機会を積む必要がある。

 

2-3. リモートでの他大学教育・非常勤の機会を模索する

  • 狙い目としては中国国内の国際大学で、多様な科目・学科での職歴を積むことができないか、人事課に掛け合ってみる。
  • 就職先では授業は一コマしか受け持たないので、非常勤でもう一コマ受け持つくらいの余裕はあると感じる。

 

  1. ネットワーキング

英語圏でメディア文化政策を研究するうえで、King’s College Londonで博士課程を過ごせたことは非常に大きな意味があった。英語圏・欧州圏トップの研究者はロンドンもしくはイギリス・アイルランドにいたため、特に意識せずとも色々な知り合いができた。こうした「地の利」が失われる以上、相当に自覚的・精力的に既存のネットワークを維持して、新たに広げていく必要がある。

 

3-1. 国際学会に継続的に参加する

  • 学会には必ず現地参加して、積極的に新しい研究者と知り合う
  • 参加候補として、International Conference on Cultural Policy Research (2024), European Association for Japanese Studies Conference (2024, 2025), International Conference on Cultural Economics (2025), International Conference on Public Policy (2025)

3-2. セミナー運営

 

3-3. オンライン読書会を企画・主催してみる

  • 研究者としての実力を落とさないためにも、学術論文・研究書をしっかりと読む読書会を専門関心が近い若手研究者と行うことが必要と思われる。(そうでないと、どうしても教務・学務を回して、手癖の範囲で研究が終わりがち)
  • 同時に、他分野の研究者と緩く広く本を読む集まりも企画してみたい。2023年5月までには立ち上げる。

 

3-4. 原稿を交換し合える研究者のサークルを作る

  • 究極的には原稿として成果を発信し続けないとどれだけ社交を頑張っても意味はない(プロとして存在意義を示すことができない)ので、しっかりと書き物を通じて議論と交流を深められる相手を作ることが肝要かと思われる。
  • そのために、既存の刊行論文については抜き刷りを関係者に送り、熟読した論文については感想を伝え、ワーキングペーパーへの助言も求める
  • 一応の目安として、1月に1人は少なくとも新たに連絡を取る

 

  1. 資金調達
  • 論文の英文校正、国際学会参加、セミナー報告者への謝金、等々、とにかく研究を進める上で、研究費はあればあるほど良い。
  • 以前のブログ記事でも参照した通り、海外である程度の時間を過ごすことは、研究者としての視野の広さや創造性に繋がるらしい(長期留学中のことを振り返っても、それはわかる)。https://yurimangasukisuki.hatenablog.com/entry/2023/02/28/174115 
  • こうした諸々の夢を叶えるため、国を問わず競争的資金への応募を続ける。
  • 標数値としては、3年間で600万円(できれば各年200万円)

 

  1. 「留学」を楽しむ

散々意識高そうなことを書いてきたことと矛盾する気もするが、折角海外で、それも学位留学先とは違う国で数年間は過ごす機会が得られるのだから、現地での生活を楽しまなければ勿体ない(し、実はそうすることで得られる経験が文化政策・クリエイティブ産業の研究者としての糧にもなる)と思っている。留学生の心持ちで現地の文化を吸収することを忘れないように心がけたい。

  • HSKで4級以上を取得する
  • 中国の国内都市を旅行する
  • 現地の人に連絡を取る、社交をする