ようやく就職先の大学がある蘇州に着任した。博士論文執筆中にオファーを貰ってから、実に一年かけて、現地にたどり着くことができた。ここまで本当に長かった。
二週間ほど暮らしてみての感想としては、現地の電話番号を入手して、スマートフォンを用いた決済の手段を確保してしまえば、今の中国は本当に驚くほどに暮らしやすい。特に、蘇州は公共交通よりもタクシーの便がよく、格安かつ迅速に市内を移動できるのは非常にありがたい。
極端な話、今の中国であれば、一度生活のインフラさえ整えてしまえば、中国語が話せなくても相当快適に暮らしていけると感じる。
とはいえ、そうしたインフラ整備については現地のホスト(自分の場合は、恋人と大学の事務)の助けによるところが大きく、彼らの助けがなければ今頃部屋に引きこもっていたとも思う。
職場の大学に通っているのだが、なによりその設備の充実ぶりとキャンパスの広大さに驚かされる。こんなに景気の良い場所が大学教育の世界にあったとは。早速、大学の学内研究費(200万円)、学内出版助成、無料の語学コース、イベント運営助成(100万円)に応募した。職場からは総じて「自分たちはこれから世界に伍する大学になるのだ、そのために研究者に金は出す」という意気込みを感じる。
自分自身の変化として、曲がりなりにも4年間ロンドンで暮らしたことで、潔癖や不安を取り払い、拙い外国語でもガンガン絡んでいこうとする、生活力が身についたような気がしている。先のことは分からないが。とりあえず今は、一週間が半年にも一年にも思えるような、密度の高く充実した新生活と新しいキャリアの立ち上げを楽しんでいる。