国際派大学教員による初任一学期目の華麗なる生活

ビザ申請の書類が揃わず、今学期(2月-5月)は日本の実家でだらだら過ごしてる。教務と学務はリモートで対応している。昼休みに自室で昼寝ができること、休み時間に自宅の風呂に入れることが魅力的。

所属先では、どの教員も基本的に授業を各学期一つしか受け持たないのだが、英国の大学院らしく一コマ一コマが結構重い。自分も大学院の必修講義の一つを受け持っているのだが、「1時間の講義、1時間のセミナー、1時間のチュートリアル」からなるパッケージを、毎週二日同じ内容で提供している。(これも英国式で、修士課程だけで100人近くいるので、50人ごとにグループを分割して同内容を繰り返す)

1週間あたりの正味の拘束時間は8時間だが、それ以外にも課題の採点、オフィスアワー、3週に1度の教授会(faculty meeting)など、なんだかんだで時間と気力を使う場面が多い。

なにしろ、フルタイムの大学教員になることは初めてなので、LMS(Learning Management System)の使い方から、シラバス・期末課題の作成、学外審査員(Liverpool Uniの責任者)への稟議など、全てを一から学ぶ必要があり、なかなかに消耗する。

一方で、事務職員は充実しており、どなたも非常に効率的かつ協力的なので、一緒に仕事をしていて気持ちが良い(この事務職員の有能さは英国大学にはない、中国大学らしい美点かもしれない)

加えて、なんだかんだ今の職場は、自分が博士課程を過ごし、TAや非常勤講師も経験したKing's College London、修士課程を亜学生として過ごしたUniversity of Warwickなど、自分が馴染みのある英国大学と基本的な制度や組織文化は同じなので、その点では非常にやりやすい(公用語が英語なのもかえって楽)

 

研究に関しては大いに停滞しており、キャリア形成という意味でもなかなかに不安や焦りが募り始めてきた。とにかく、今は「懲戒免職を食らわないレベルでやらかさず、無事に学期終わりまで完走」さえできれば、どれほど授業評価が低くても、同僚・上司から呆れられようとも、勝利に等しいと割り切るしかない。

博士論文を切り抜いた論文が2本ほど、目標としていたジャーナルでデスクリジェクトを免れ査読に回ったこと、RAから始まって共著者に格上げされた研究の成果が社会学系のカンファレンスに複数採択されたこと、くらいがここ2ヶ月の研究進捗かしら。

一方で、恩師の薦めで初めてみた電子抜き刷り配達作戦はそれなりに功を奏している。ワーキングペーパーや新刊論文を自分が影響を受けた研究者に(一方的な)お礼とともに送りつけたところ、それが気に入られ、シンガポールのLasalle College of the Arts、中国国内のUniversity of Nottingham Ningbo Chinaで客員講義を行う機会に恵まれた。

蘇州にも赴任できず、埼玉の実家に留まっている現状はそれなりに不本意だが、それでも今いる場所で出来ることをやっていくしかない。